《『渋谷』(国木田独歩作)》

《『渋谷』(国木田独歩作)》

『渋谷』( 国木田独歩作 )
2014|インクジェットプリント、岩波文庫
撮影 : 森下佳

国木田独歩の『武蔵野』で描かれている「武蔵野」とは、実は「渋谷」であった。
独歩の『武蔵野』といえば、1898年に書かれた「郊外文学」の端緒である。今の感覚に照らせば、「武蔵野」と聞けば埼玉から東京にかかる地域や多摩をイメージしがちであるが、ここで描かれる「郊外」としての「武蔵野」とは、渋谷周辺の地域を指したのだ。文芸評論家・川本三郎が『郊外の文学史』で言うように、「明治の中頃の渋谷(渋谷村上渋谷)は、雑木林に囲まれた田園」であり、「独歩は、明治二十九年、二十五歳のときに、弟の収二と共に渋谷に越して」、「丘の上の一軒家を借りた」。そう、独歩は渋谷の道玄坂辺りに住み、『武蔵野』=『渋谷』を書いたのである。
実際に渋谷公会堂付近にある「独歩居住跡」には、グラフィティ・ライターによるたくさんのボムが施された電柱に並んで、小さな木柱が立っていた。

『渋谷』( 国木田独歩作 )
2014|インクジェットプリント、岩波文庫
撮影 : 森下佳

国木田独歩の『武蔵野』で描かれている「武蔵野」とは、実は「渋谷」であった。
独歩の『武蔵野』といえば、1898年に書かれた「郊外文学」の端緒である。今の感覚に照らせば、「武蔵野」と聞けば埼玉から東京にかかる地域や多摩をイメージしがちであるが、ここで描かれる「郊外」としての「武蔵野」とは、渋谷周辺の地域を指したのだ。文芸評論家・川本三郎が『郊外の文学史』で言うように、「明治の中頃の渋谷(渋谷村上渋谷)は、雑木林に囲まれた田園」であり、「独歩は、明治二十九年、二十五歳のときに、弟の収二と共に渋谷に越して」、「丘の上の一軒家を借りた」。そう、独歩は渋谷の道玄坂辺りに住み、『武蔵野』=『渋谷』を書いたのである。
実際に渋谷公会堂付近にある「独歩居住跡」には、グラフィティ・ライターによるたくさんのボムが施された電柱に並んで、小さな木柱が立っていた。