ground under

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スクリーンショット 2017-09-08 0.20.13 Shuttle RUN for 2020
中島晴矢  HARUYA  Nakajima
video  7’46”
2017

運動習慣のない私がスポーツと聞いて思い出すのは体育の授業である。そこには何か強制めいた、気怠い空気が漂っていた。競技性の高いドッジボールやキックベースはさておき、体力テストに対し全く気乗りしなかったのは言うまでもない。特にシャトルラン※はやりきれなかった。走ることによって何処かに到達できるならまだしも、一切の前進も後退もなく、同一線状を往復し続けることには徒労感が募った。しかも警笛じみた無機質な合図音は刻々と早まっていく。処置に間に合わなければ爆発してしまう時限爆弾の導火線のように、それは焦燥感を掻き立てた。……
2020年の東京オリンピックに向けて、メイン会場となる新国立競技場の建設が急ピッチで進められている。とはいえ、当初予定されていたザハ・ハディト案も白紙化し、2016年に隈研吾案に決定してから、同年末ようやく着工された状況だ。工事の遅延は明らかで、未だに膨大なコストなどの問題も山積している。さらに2017年3月には、建設工事に携わっていた男性が過労自殺する痛ましい事件も起きた。
8月の蒸すような猛暑のなか(オリンピックもこの季節に行われる!)、明治神宮外苑へと足を運んだ。新国立競技場の建設現場には幾台ものクレーンが林立している。青々とした空に幾重にも伸びた赤い鉄尖が突き刺さるその様は、どこかおぞましくさえ見える。
仮設のレガシー。
ふと、シャトルランが脳裏をよぎった。
前進のない終わりなき反復も、加速度的に迫るタイムリミットも、じりじりと積もる焦慮も、疲弊も、いま私たちの眼前に広がっているものではないか?ーーー
むろん、シャトルランは単なる体力測定テストであり、オリンピック種目ではない。

※シャトルラン(往復持久走)
有酸素運動能力に対する体力測定の方法。文部科学省により2001年から小中学校の体力テストの項目に採用された。20m間隔で並行に引かれた線の一方から他方へ合図音に合わせて走行を繰り返す。合図音は約1分ごとに短くなっていき、何回往復できたかを測る。

 

2017/09/18 – 2017/09/25
ground under
SEZON ART GALLERY B1F B2F

「建築/土木/震災/オリンピック」をテーマに、気鋭作家11名が、都市の ”豊かな仮設” を試みる現代美術展「ground under」を、9月18日 (月・祝) から9月25日 (月)まで、神宮前 SEZON ART GALLERYにて開催します。
参加作家は、秋山佑太、井戸博章、大槌秀樹、関優花、立入禁止、中島晴矢、ユアサエボシ、山田はじめ、KOURYOU、Zakkubalan、WHOLE9の11名。

オルタナティブなアートシーンを横断的に活動する中島晴矢、KOURYOUや、カオス*ラウンジに参加する井戸博章、山形藝術界隈の大槌秀樹、また、岡本太郎現代芸術賞入選作家であるユアサエボシ、ストリートアートをベースに、amazon, adidas, Redbullなどのクライアントワークを手掛けるWHOLE9、ニューヨークを拠点としながらも、2017年には、ワタリウム美術館で開催された「坂本龍一 | 設置音楽展」や、「Reborn-Art Festival」に作品を出展し注目を集めるアーティストデュオ Zakkubalanなど多彩な表現者が名を連ねます。

本展キュレーターであり参加作家である秋山佑太は、昨年末から今年の初旬にかけて江東区の取り壊される一軒家で開催された「BARRACKOUT バラックアウト」展の企画・立案者であり、本展は、同展の「会場をバラック小屋に見立て、関東大震災や東京大空襲の土地の記憶と現在とを重ね合わせ接続する」という試みのその先を提示するものあり、今回、秋山は自身の作品としては、福島の地で発表した「地蔵堂修復」の続編を出展します。また、本展に掲げられた ”豊かな仮設” という試みについては、ステートメントのなかで次のように詳細を語っています。

「わたしが提案する「豊かな仮設」とは、「風化と更新」をその特性とする。「豊かな仮設」における建築は、数年で建物自体が部材の劣化によって風化していくものである。しかし、風化していく度に、進行形で移り変わる状況に対応していくような可変的な身体を志向する。ちょうど戦後の焼け野原に建ったバラックのように。」

2020年からその先、都市はどうなっていくのか。この難問への一つの解答を提示する本展に、是非ご期待ください。

現代美術展「ground under」事務局

ground under
会期 : 2017年9月18日 (月・祝) – 9月25日 (月)
会場 : SEZON ART GALLERY B1F and B2F (東京都渋谷区神宮前3-6-7)
時間 : 11:00 – 18:00
休廊 : 会期中無休

出展作家 : 秋山佑太、井戸博章、大槌秀樹、関優花、立入禁止、中島晴矢、ユアサエボシ、山田はじめ、KOURYOU、Zakkubalan
イベントパフォーマンス : WHOLE9
キュレーション : 秋山佑太
サインデザイン : 余剰デザイン
グラフィックデザイン : スズキあゆみ
ウェブデザイン : じょいとも
企画協力 : mograg gallery、沖冲、TAV GALLERY、西田編集長、中央本線画廊、丫戊个堂、小林太陽、石山律

展覧会ステイトメント

去りまた来る大規模災害と祝祭を前にして。共同体の「文化か安全か」。我々はその二者択一を突きつけられている。
この先、数十年後を考えるならば、第一に安全が重要であることは疑いの余地はないが、一方で共同体の文化や営みを考えることも同じく欠かせない。
この「いかなる街をつくるか」という難問を前に、我々はただ沈黙することは許されず、常に誰かに解答を迫られている。

約半世紀前に、生命として建築と都市を捉える想像力を掲げた先人がいた。
彼らは、都市全体を細胞の集まりと見立て、状況にあわせて生まれ変わっていくような、可変的で柔軟な身体性を持った都市を夢見た。
その思想は実らなかったが、この国が過渡期にある現在だからこそ、もう一度立ち戻って検証してみる必要があるのではないか。

わたしは「豊かな仮設」を試みる。

主に仮設という言葉は画一的で無機質な固いプレハブ小屋を想起させるだろう。わたしが提案する「豊かな仮設」とは、「風化と更新」をその特性とする。「豊かな仮設」における建築は、数年で建物自体が部材の劣化によって風化していくものである。
しかし、風化していく度に、進行形で移り変わる状況に対応していくような可変的な身体を志向する。ちょうど戦後の焼け野原に建ったバラックのように。
それこそが「豊かな仮設」であり、そしてその中で待つことで、かの難問である現在の街を考えるための時間を作る。
我々は「豊かな仮設」の中で暮らしながら、目下の地面を暴き出す。そうして現れた、歴史と文化が刻まれた地層の断面を解析し、最後に杭を打ち立て、新しい街をつくる足がかりとする。
すなわち、考えるために待つのだ。
そのための「豊かな仮設」である。

思考しながら待ち、地下を掘りつづけながらも潜伏し、手を止めることなく目前に広がる地層と対峙する。それは正しく、時間の蓄積であり、文化や歴史や因縁の堆積物との対話である。
縦方向に連なる層を読み解くために、わたしたちは遥か下方に潜りつづける。
座標軸にある理論上の原点に至るまで。

本展キュレーター 秋山 佑太

http://groundunder.info/