《New World Border》

《New World Border》

New World Border
2018-2019|テトロンバンテンに昇華転写プリント、 パネル|各 118.9 × 84.1 × 4.5 cm
都市 : アテネ、ベルリン、東京、ミュンヘン、モスクワ、ロサンゼルス

現在の東京は、オリンピックによって作られたと言っても過言ではない。
1964年の東京五輪に向けて、渋谷地区発展の礎となった所謂「オリンピック道路」や、日本橋の上をまたぐ首都高速道路、東海道新幹線、東京モノレールといった数々のインフラが整備されている。高度経済成長と同期して、東京の姿を大変貌させたその都市改造は、当時の日本が敗戦からの「復興」を世界に示す上で、それなりに重要な意味を担っていたと言える。
一方で、2020はどうだろう。東日本大震災の余波が色濃い2013年に招致が決定し、コンパクトな「復興五輪」として喧伝された東京オリンピックだが、開催費の高騰や、マラソン開催地の札幌への変更など、数多の混乱は今も続いている。それは控え目に言って、2025年の大阪万博を含め、この国に山積した問題を覆い隠す追憶の空騒ぎとしか思えない。
アルテ・ポーヴェラのアーティストであるアリギエロ・ボエッティの代表作に、《MAPPA》がある。各国の領土ごとに国旗が縫い込まれた、世界地図の織物だ。その作品を下敷きに、世界の国境線が迷彩柄のように混沌と化しつつある現代、”新しい地図”を提示するのが《New World Border》シリーズである。本展では、近代オリンピック史を遡る。
取り上げるのは、1896年にアテネで開催された第1回大会、1936年にナチス政権下で敢行されたベルリン大会、1964年東京大会、パレスチナゲリラのテロ「黒い九月事件」が起きた1972年ミュンヘン大会、ソ連のアフガニスタン侵攻で西側諸国がボイコットした1980年モスクワ大会、そして今度は逆に東側諸国がボイコットし、初の完全民営化五輪としてオリンピックが「商業化」した端緒にあたる、1984年のロサンゼルス大会だ。
それぞれの大会参加国の全国旗を改めて翻させることで、レニ・リーフェンシュタールによる映画『オリンピア』を引くまでもなく、近代五輪が担ってきたある種の〈イデオロギー〉を炙り出すことを試みる。

New World Border
2018-2019|テトロンバンテンに昇華転写プリント、 パネル|各 118.9 × 84.1 × 4.5 cm
都市 : アテネ、ベルリン、東京、ミュンヘン、モスクワ、ロサンゼルス

現在の東京は、オリンピックによって作られたと言っても過言ではない。
1964年の東京五輪に向けて、渋谷地区発展の礎となった所謂「オリンピック道路」や、日本橋の上をまたぐ首都高速道路、東海道新幹線、東京モノレールといった数々のインフラが整備されている。高度経済成長と同期して、東京の姿を大変貌させたその都市改造は、当時の日本が敗戦からの「復興」を世界に示す上で、それなりに重要な意味を担っていたと言える。
一方で、2020はどうだろう。東日本大震災の余波が色濃い2013年に招致が決定し、コンパクトな「復興五輪」として喧伝された東京オリンピックだが、開催費の高騰や、マラソン開催地の札幌への変更など、数多の混乱は今も続いている。それは控え目に言って、2025年の大阪万博を含め、この国に山積した問題を覆い隠す追憶の空騒ぎとしか思えない。
アルテ・ポーヴェラのアーティストであるアリギエロ・ボエッティの代表作に、《MAPPA》がある。各国の領土ごとに国旗が縫い込まれた、世界地図の織物だ。その作品を下敷きに、世界の国境線が迷彩柄のように混沌と化しつつある現代、”新しい地図”を提示するのが《New World Border》シリーズである。本展では、近代オリンピック史を遡る。
取り上げるのは、1896年にアテネで開催された第1回大会、1936年にナチス政権下で敢行されたベルリン大会、1964年東京大会、パレスチナゲリラのテロ「黒い九月事件」が起きた1972年ミュンヘン大会、ソ連のアフガニスタン侵攻で西側諸国がボイコットした1980年モスクワ大会、そして今度は逆に東側諸国がボイコットし、初の完全民営化五輪としてオリンピックが「商業化」した端緒にあたる、1984年のロサンゼルス大会だ。
それぞれの大会参加国の全国旗を改めて翻させることで、レニ・リーフェンシュタールによる映画『オリンピア』を引くまでもなく、近代五輪が担ってきたある種の〈イデオロギー〉を炙り出すことを試みる。