《Tokyo Suicide Girl Returns》

《Tokyo Suicide Girl Returns》

Tokyo Suicide Girl Returns
2019|インクジェットプリント、アクリルマウント|126.1 × 84.1 cm
地区 : 台東区千束

東京は何度も「死」を経験している。
江戸にしろ東京にしろ、大きな変化を伴う時にはいつも、地震、大火、洪水、戦災といった「災害」が絡んでいた。それは江戸文化の中心だった“不夜城”吉原も例外ではない。
浅草の芝居町に並ぶ「二大悪所」として、頽廃的な洗練を極めた吉原遊郭は、もともと江戸時代の初期、日本橋に誕生している。やがて明暦の大火の後、辺鄙な周縁に位置する浅草寺の裏手に移されたのが(新)吉原である。
それからも吉原の被った災害は、安政の大地震、吉原大火、関東大震災、そして東京大空襲と立て続く。いずれも妓楼や茶屋が数百軒規模で焼失する壊滅的な被害を受け、その度にたくさんの遊女たちが亡くなってきた。
ただ、災害でなくとも、20代で早死にする遊女は多かったという。幼い時分に女衒に売られ、不自由で働きずくめの生活の中、荒淫、妊娠、中絶、性病、病気、借金による心労と、彼女たちの生涯は辛く厳しいものだった。場合によってはそれら全てを投げ出して、剃刀で首を切って死のうとしたり、惚れ合った客と心中を計ったりしたそうだ。
日本堤から脇へ入ると、今でも一帯は歓楽街である。もちろんかつての面影はないが、焼け跡から「復興」を繰り返してきたことを想えば、それも詮無いことだろう。
男一人歩いていると、すかさず客引きに声をかけられる。目を泳がせながら吉原大門をくぐり抜け、淋しげに残された見返り柳を見返す。通りの果てには、まるで巨大な樹木のようなスカイツリーが聳え立っている。

Tokyo Suicide Girl Returns
2019|インクジェットプリント、アクリルマウント|126.1 × 84.1 cm
地区 : 台東区千束

東京は何度も「死」を経験している。
江戸にしろ東京にしろ、大きな変化を伴う時にはいつも、地震、大火、洪水、戦災といった「災害」が絡んでいた。それは江戸文化の中心だった“不夜城”吉原も例外ではない。
浅草の芝居町に並ぶ「二大悪所」として、頽廃的な洗練を極めた吉原遊郭は、もともと江戸時代の初期、日本橋に誕生している。やがて明暦の大火の後、辺鄙な周縁に位置する浅草寺の裏手に移されたのが(新)吉原である。
それからも吉原の被った災害は、安政の大地震、吉原大火、関東大震災、そして東京大空襲と立て続く。いずれも妓楼や茶屋が数百軒規模で焼失する壊滅的な被害を受け、その度にたくさんの遊女たちが亡くなってきた。
ただ、災害でなくとも、20代で早死にする遊女は多かったという。幼い時分に女衒に売られ、不自由で働きずくめの生活の中、荒淫、妊娠、中絶、性病、病気、借金による心労と、彼女たちの生涯は辛く厳しいものだった。場合によってはそれら全てを投げ出して、剃刀で首を切って死のうとしたり、惚れ合った客と心中を計ったりしたそうだ。
日本堤から脇へ入ると、今でも一帯は歓楽街である。もちろんかつての面影はないが、焼け跡から「復興」を繰り返してきたことを想えば、それも詮無いことだろう。
男一人歩いていると、すかさず客引きに声をかけられる。目を泳がせながら吉原大門をくぐり抜け、淋しげに残された見返り柳を見返す。通りの果てには、まるで巨大な樹木のようなスカイツリーが聳え立っている。