ニュー・フラット・フィールド

スクリーンショット 2017-11-09 13.21.18 スクリーンショット 2017-11-09 13.24.35スクリーンショット 2017-11-09 13.26.30スクリーンショット 2017-11-09 13.22.15バーリ・トゥード in ニュータウン-パルテノン-
中島晴矢
Video   19’33”
サイズ可変
2017

 

美術展『ニュー・フラット・フィールド』(NEW TOWN)

201711-newflatfield-photo15_l

『ニュー・フラット・フィールド』開催に際して

『ニュー・フラット・フィールド』は、ニュータウンを舞台にした、アーティストたちによる企画展です。会場は多摩ニュータウンにある旧三本松小学校の校舎で、会期中に複数の企画展示やトークイベントが予定されています。

なぜこの場所で展覧会が開かれることになったのでしょう?──その理由は、今から約25年前、本展ディレクターのひとりである石井友人がこの学校に生徒として通っていた事実にまで遡ります。「ニュータウン」と一口に言ってみたところで、実際には一概に語ることが難しいニュータウンにおける多様な生に寄り添うために、ニュータウン「について」語るのではなく、ニュータウン「から」語ることを目指し、本展は企画されました。

本展の企図は、ニュータウンについて「語り尽くす」ことではなく、ニュータウンについて当事者の立場から「語り損なう」ことにあります。
なぜなら、ニュータウンには多様な生の様態があり、そこから生まれる表現もまた多様であるため、それらを一度に語り尽くすことは到底できないからです。そのため、本展を通してニュータウンの「語り損ない」が生み出され、それを「語り直す」ために今後も展覧会が必要とされ、全国各地に拡張したニュータウンのように『ニュー・フラット・フィールド』が拡張していくことを目指します。

展覧会ディレクションは石井友人・中島晴矢・原田裕規が担当。参加作家・登壇者には、石井友人、地理人(今和泉隆行)、関優花、かつしかけいた、Candy Factory Projects、小林健太、小林のりお、佐々木友輔、佐藤研吾、篠原雅武、筒井宏樹、中島晴矢、原田裕規、門眞妙、山根秀信の15組が名を連ねます。

いま・ここにニュータウン「から」生まれる多様な表現を、そしてその「語り損ない」を、ぜひ目撃しに来てください。

//////////////////////////////////////
会期:2017年11月11日(土)〜11月12日(日)
会場:デジタルハリウッド大学八王子制作スタジオ(旧三本松小学校)

主催:NEWTOWN制作委員会(CINRA.NET、PONY CANYON、DUM DUM)
展覧会ディレクション:石井友人、中島晴矢、原田裕規
「虹の彼方」企画構成:石井友人
「仮留めの地」企画構成:佐々木友輔
「愛憎の風景」企画構成:中島晴矢・原田裕規
会場構成協力:佐藤研吾、帆苅祥太郎
展覧会グラフィック:仲村健太郎
参加作家・登壇者:石井友人、地理人(今和泉隆行)、関優花、かつしかけいた、Candy Factory Projects、小林健太、小林のりお、佐々木友輔、佐藤研吾、篠原雅武、筒井宏樹、中島晴矢、原田裕規、門眞妙、山根秀信
//////////////////////////////////////

ディレクターズ・メッセージ

ぼんやりと遠くを見ていた。
目を閉じると光だけが残った。
――小林のりお『LANDSCAPES』(1986年)

光の記憶。
かつて想像された未来空間へ実際に立ち会った時、新しかったはずのこの場所へと向けられる、複雑な感情をどのように表現すれば良いのだろう? 『ニュー・フラット・フィールド』という展覧会は、20世紀に誕生した郊外空間を舞台としながら、そのような問いに端を発しています。理想郷としてのニュータウン/新しい街は、とうに新陳代謝を失い、色褪せ、透明だった窓たちは半透明なものへと変化したように思われます。

そこで、人々によって生きられた空間を、眺めることから始めてみる。
そして、人工都市に漂う浮遊感の中に、微細な、変化の兆候を見出すよう努めてみる。

『ニュー・フラット・フィールド』の「New」は、新しさを謳いながら、必ずしも新しさを意味することなく、まるで、もう一度その新しさを生き直しているかのようです。そこには、多層的な新しさが重なり合います。

何も起きることのない平坦な戦場(※)を、一息に駆け抜けた私たちは、かつて夢見た未来空間を確かに生きています。しかしながら、私たち自身は、その未来に追いつくことは決してなく、別の未来へと向けて歩み始めます。

それは、表層的な既視感の中で、未だかつて誰も見たことのなかった、新しい風景となることでしょう。

※ウィリアム・ギブソン『愛する人(みっつの頭のための声)』(1989年)、岡崎京子『リバーズ・エッジ』(1994年)

石井友人

//////////////////////////////////////

「愛憎の風景」

文責:中島晴矢

たまたまわたしがそこにいただけ ただそれだけ
──相対性理論「たまたまニュータウン」

本展は、現代におけるニュータウンのひとつの風景を可視化する試みである。
私はニュータウンで生まれた。横浜市の都筑ニュータウンから、田園都市線沿線のたまプラーザにて育った。そこには、駅前の充分な商業施設、たくさんのマンションや戸建て住宅、緑豊かな公園、学校、地区センター、病院、交番など、生活に必要なものは全て揃っていた。幼少期、私はそこで楽しく日々を過ごした。記憶に紐づけられた濃密な体験を今でもよく覚えている。しかし、思春期になると何処か物足りなくなった。刺激や猥雑さが足りない。日常に覆われた街に嫌気がさした。都市の非日常性に焦がれ、東京で遊んだ。常にそこには「愛憎」があった。
そんなニュータウンの風景を、いま見つめ直してみる。
そもそも「風景」とは、柄谷行人が『日本近代文学の起源』で書いたように、内的人間により「発見」されたものである。もともと純粋な風景そのものが広がっているのではない。ひとがある内面をもって眼差すことで、風景は立ち現れる。たとえば、近代の端緒に、国木田独歩が「武蔵野」の森を「郊外」として見いだしたように。その意味で、ニュータウンの風景もまた、十人十色の見え方があろう。また、各人の中でさえも、玉虫色の光彩を放っているだろう。
哲学者の篠原雅武は『生きられたニュータウン』において、ティモシー・モートンの議論を引きながら、ニュータウンを空間の「雰囲気」や「質感」をもとに捉え直している。本展は、そのようなニュータウン空間の持つ独特の「空気感」を、多様なアーティストたちの表象する「風景」によって構成する営みである。
ニュータウンとは両義的な場所だ。「都市(中心)」でも「地方(周縁)」でもない「立場なき場所」(若林幹夫『郊外の社会学』)──その曖昧さに佇みながら、肯定でも否定でもなく、引き裂かれたまま存在すること。
この町は自動車に睥睨され、巨大なスーパーマーケットが屹立し、建造物が置かれている。その中に人間の生活があり、循環が新たな生を再生産し、また忘れ去られる命がある。
そして、そこで人々は日々格闘している。滑稽なくらい、切実に。
多摩ニュータウンの廃校で、愛とヘイトに塗れた風景は、現代日本における日常のリアリティを伴って浮き彫りになるだろう。なぜなら私たちは皆、たまたまそこにいたのだから。

企画構成:中島晴矢・原田裕規
参加作家:関優花、かつしかけいた、小林健太、佐藤研吾、中島晴矢、原田裕規、山根秀信

愛憎の風景 会場MAP

004 005 006 007 008 010009020Photo:Katsura Muramatsu


「虹の彼方」

中学生だった頃、ふとしたことがきっかけで、慣れ親しんでいた多摩ニュータウンにあるテーマパーク、サンリオ・ピューロランドの虹のファサードの脇の道から、その裏手を見に行ったことがあります。夢のエンターテイメント空間の裏側に回り込むと、そこには異様にのっぺりしたテーマパークの高い壁面があり、不思議なくらいいつも通りの、ごく普通の生活空間が広がっていました。「虹の彼方」と銘打ったセクションでは、アーティストの誘導する視線の先に、ひょっこり露呈してしまっている/いた消費社会の舞台裏、あるいは、七色の発光物に魅入っている/いた私たち自身の姿が認められるでしょう。一旦立ち止まり、少し退色した虹の向こう側に広がっている光景を、いま一度想像してみましょう。

企画構成:石井友人
参加作家:石井友人、Candy Factory Projects、小林のりお

016 017 014 012
Photo:Katsura Muramatsu


「仮留めの地」

無数の郊外論や風景論が世に出回っているにも関わらず、わたしたちはいまだ依って立つ場所を適切に見たり触れたりできていない。そう思い知らされるのは、例えば「ここは何もないところだから」とか「風景は撮り尽くされてしまった」といった言葉を──NGワードに登録していたはずなのに──咄嗟に口に出してしまうときです。慣れ親しんだ街の途方もない捉え難さから出発して、土地の時間的・空間的なスケール、人間のスケール、制作のスケールがかろうじて重なり合う地点を見極め、仮留めすること。本展は、場所の記述方法の模索を続ける作家三名による現状報告です。

企画構成:佐々木友輔
参加作家:今和泉隆行(地理人)、佐々木友輔、門眞妙

001002 003Photo:Katsura Muramatsu


トークイベント

「ニュータウン発の文化の可能性」
日時:11月11日(土)14:00 – 16:00
会場:デジタルハリウッド大学八王子制作スタジオ2階展示室
登壇者:篠原雅武、中島晴矢、原田裕規、石井友人

8、Photo:Tomohito Ishii


「風景のメディウム──キャラクターから何が見えるか」

日時:11月12日(日)12:00 – 14:00
会場:デジタルハリウッド大学八王子制作スタジオ2階展示室
登壇者:筒井宏樹、門眞妙、佐々木友輔

9、Photo:Tomohito Ishii


「ニュー・フラット・フィールドとその作品について」

日時:11月12日(日)16:00 – 18:00
会場:デジタルハリウッド大学八王子制作スタジオ2階展示室
登壇者:石井友人、小林のりお、佐々木友輔、中島晴矢、原田裕規 ほか

021Photo:Katsura Muramatsu