上下・左右・いまここ

Main visual

名称:中島晴矢個展「上下・左右・いまここ」
会場:原爆の図 丸木美術館 アートスペース・ギャラリー
会期:2014年11月20日〜12月13日
キュレーター:福住廉(美術評論家)
パフォーマンスイベント:11月22日【LIVE Performance】“Now-Here”
トークイベント:12月12日『「反戦」を乗り越える』居原田遥 × 木村奈緒 × 中島晴矢
アーティストトーク:12月13日 福住廉(美術評論家)× 中島晴矢
ハンドアウト(PDF)
「上下・左右・いまここ」随想

突如2014年の初夏に美術評論家の福住廉氏から「丸木美術館で個展をやらないか?」と打診を受けた時、椹木野衣やChim↑Pomの仕事などで「原爆の図」の、その存在と名前と図像程度は知っていたものの、しかし現物を見たことも無かった私が、其処で「反核・反戦をテーマに」作品を展示するなど、不相応だし畏れ多いと思った。その懸念は実際に生で「原爆の図」を見ていよいよ大きくなり、その圧倒的な当事者性から成る凄惨な主題と壮絶な画面に慄然として震えた。翻って、私は? ──この表象不可能性の前に立ち尽くした体験と、ポリティカルな事象を扱うことの自身への問い直しこそが、個展「上下・左右・いまここ」の出発点にして根幹だった。
結果、同時開催のアンデパンダン「今日の反核反戦展」に対し"ノリつつ相対化する"ことを意図して制作を行い、女の子が軍への募金を募るアイロニカルなDMにはじまり、グラフィティ、ラップのMV、原爆ドームの映像、日の丸……などと好き放題やらせてもらえたのは、ひとえに丸木美術館の懐の深さであり、実行委員や観客の方の理解があったからであると、今になってしみじみと思う。
個展中には「反戦」展のスピンオフ企画やアーティスト・トークなども開かせてもらったが、やはり印象深いのは「反核反戦展」と共同のパフォーマンス・イヴェントだ。辺りになにもない東松山の辺境、日が落ちかかる頃合いに、放射性廃棄物ドラム缶とインダストリアル・ノイズの轟音が響き渡り、私のアジテート的なラップも相まって、パフォーマーや美術家や観客など関係なく、皆が(呼びかけ人・池田龍雄氏までが)身体を揺らす混沌。その空間に、私が綴った「上下! 首振って階級をシェイク/左右! 腰揺らし両翼をブレイク/この現実は嘘も偽りもねぇ/いまここ、いまここ」というリリックの一瞬の現出を視た気がして、この展示をやれて良かったとひとり手応えを感じていたのだった。

『丸木美術館ニュース 』第120号, 中島晴矢

名称:中島晴矢個展「上下・左右・いまここ」
会場:原爆の図 丸木美術館 アートスペース・ギャラリー
会期:2014年11月20日〜12月13日
キュレーター:福住廉(美術評論家)
パフォーマンスイベント:11月22日【LIVE Performance】“Now-Here”
トークイベント:12月12日『「反戦」を乗り越える』居原田遥 × 木村奈緒 × 中島晴矢
アーティストトーク:12月13日 福住廉(美術評論家)× 中島晴矢
ハンドアウト(PDF)
「上下・左右・いまここ」随想

突如2014年の初夏に美術評論家の福住廉氏から「丸木美術館で個展をやらないか?」と打診を受けた時、椹木野衣やChim↑Pomの仕事などで「原爆の図」の、その存在と名前と図像程度は知っていたものの、しかし現物を見たことも無かった私が、其処で「反核・反戦をテーマに」作品を展示するなど、不相応だし畏れ多いと思った。その懸念は実際に生で「原爆の図」を見ていよいよ大きくなり、その圧倒的な当事者性から成る凄惨な主題と壮絶な画面に慄然として震えた。翻って、私は? ──この表象不可能性の前に立ち尽くした体験と、ポリティカルな事象を扱うことの自身への問い直しこそが、個展「上下・左右・いまここ」の出発点にして根幹だった。
結果、同時開催のアンデパンダン「今日の反核反戦展」に対し”ノリつつ相対化する”ことを意図して制作を行い、女の子が軍への募金を募るアイロニカルなDMにはじまり、グラフィティ、ラップのMV、原爆ドームの映像、日の丸……などと好き放題やらせてもらえたのは、ひとえに丸木美術館の懐の深さであり、実行委員や観客の方の理解があったからであると、今になってしみじみと思う。
個展中には「反戦」展のスピンオフ企画やアーティスト・トークなども開かせてもらったが、やはり印象深いのは「反核反戦展」と共同のパフォーマンス・イヴェントだ。辺りになにもない東松山の辺境、日が落ちかかる頃合いに、放射性廃棄物ドラム缶とインダストリアル・ノイズの轟音が響き渡り、私のアジテート的なラップも相まって、パフォーマーや美術家や観客など関係なく、皆が(呼びかけ人・池田龍雄氏までが)身体を揺らす混沌。その空間に、私が綴った「上下! 首振って階級をシェイク/左右! 腰揺らし両翼をブレイク/この現実は嘘も偽りもねぇ/いまここ、いまここ」というリリックの一瞬の現出を視た気がして、この展示をやれて良かったとひとり手応えを感じていたのだった。

『丸木美術館ニュース 』第120号, 中島晴矢