ペネローペの境界

ペネローペの境界

New World Border

New World Border
中島晴矢
パネル、テトロンバンテンに昇華転写プリント
2730 × 1300 mm
2015

アルテ・ポーヴェラのイタリア人作家、アリギエロ・ボエッティの代表作に《MAPPA》がある。これは、世界地図をベースに、各国の領土・国境線ごとにその国の国旗が縫い込まれているという、織物の作品だ。一見、華やかで楽しいビジュアルにみえるが、しかし、制作の動機は極めてコンセプチュアルである。なぜなら彼は、1967年に起きたアラブ・イスラエル戦争(第三次中東戦争)で国境線が変化したことをひとつのきっかけとして、《MAPPA》の制作を始めたからだ。彼は言う。
「私の仕事、『マッパ』は秩序の提示であり、ゲーム(戦争)のルールを知るための疑問である」※
21世紀の現代、ボエッティの言葉を借りて言えば、「ゲーム(戦争)のルール」は変わった。
国旗に象徴される国境内の領土を基とした主権国家間の「ゲーム(戦争)」から、テロリズム、ゲリラ戦、そしてインターネットにおける動画投稿サイトやSNSを駆使したグローバルな情報戦へと変容を遂げている。それは終わりなきゲーム、終局なきチェスのようなものだろう。であるがゆえにこそ、僕らは”新しい地図”を提示する必要がある。
それは、領土ベースで国旗が区切られた「秩序」ではなく、各々の「普遍」を巡って、主義・民族・宗教・国家などが横溢してぶつかり合う”混沌”であり、「われわれ/彼ら」の間の境界線(Border Line)を絶えず刷新し引き直し続ける、即ち”織ってはほどかれる”、迷彩柄のように眩惑的な、新しい世界地図になるだろう。
※引用「アリギエロ・ボエッティ、哲学的な問いかけ」